常設展
印象派をたのしむ

美術絵画織「ひまわり」

印象派とは

1874年にモネ、ルノワール、セザンヌ、ドガなど30人のメンバーが行った展覧会から始まったとされる、印象派。それ以前の写実主義を受け継いで、とくに屋外制作を重んじ、明るい色彩で光と空気に包まれた風景や事物の印象を描きはじめました。
印象派の最大の特色は、光を表現すること。それまでの神話や宗教画など「見たことのない世界を描く」ことが高貴とされた時代に、「自分が見たままの世界を描く」ことに専念したのです。

日本人にとって印象派の作品は受け入れやすく、企画展がつねに盛況となるのは、印象派の画家たちがジャポニズムを積極的に取り入れていたから。また、それまでの神話や宗教画とは異なり、昔からなじみのある風俗画や風景画が印象派の画題に多いことも影響しているようです。

印象派の特色である光を、そのペイントタッチまで、さまざまな織技法で繊細かつ優美に織り上げました。西陣織あさぎと巨匠たちの名画が生み出す華麗なハーモニーをお愉しみください。

作品のご紹介

美術絵画織「ひまわり」

数多くの作品を制作したゴッホ。そのなかでも世界的に知られる代表作がひまわりです。ゴッホは南フランスのアルル時代に、花瓶に生けたひまわりを7点描いていますが、4点目のロンドンナショナルギャラリー蔵の作品をもとに織り上げています。
大胆な色使い(特にこだわった明るい黄色)と、力強く激しいブラシストロークに注目し、西陣織のさまざまな織技法をつかって表現しています。近づいて、ゴッホの息遣いを感じてください。

フィンセント・ファン・ゴッホ(1853年~1890年)

オランダの後期印象派の画家で、20世紀初めの前衛芸術家たちに大きな影響を与えました。数多くの作品を制作したことで知られていますが、決して成功した芸術家とはいえず、生存中はたった1点しか売れなかったとか。
ゴッホは印象派のなかで最もジャポニズムの影響を受けた画家であり、明るい色彩や大胆な構図などが特徴的。歌川広重の浮世絵を模写した作品も残されています。

美術絵画織「睡蓮の池」

変化し続ける自然の色彩と光の変化をとらえるために、時間帯や視点を変えて何度もおなじ風景を描いた「睡蓮」シリーズです。
パリ郊外のジヴェルニーにあるモネの邸宅には、日本の太鼓橋をまねて作ったとされる橋が架かっており、それを描いたロンドンナショナルギャラリー蔵の作品をもとに織り上げています。
モネがつねに追求していた「変化し続ける光と雰囲気の印象」を、西陣織のさまざまな織技法をつかって表現しています。

クロード・モネ(1840年~1926年)

フランスの印象派を創設した画家。時間や季節とともに変化し続ける、自然の色彩と色の変化を追求しつづけました。印象派画家のなかで最も長寿で、20世紀に入ってからも「睡蓮」の連作をはじめ多くの作品を遺しました。
ジャポニズムに影響を受けた画家の一人でもあり、日本の着物姿の夫人をモデルにした「ラ・ジャポネーズ」や、パリ郊外のジヴェルニーの邸宅には葛飾北斎、歌川広重などの日本の浮世絵がコレクションされています。

美術絵画織「ブージヴァルのダンス」

パリのセーヌ川沿いにあるブージヴァルで踊る男女を描いた傑作で、「田舎のダンス」「都会のダンス」と同年に発表された3部作のひとつ。人物のしぐさや表情がいきいきと鮮明に描かれた、幸福感に包まれた一枚です。
印象派ならではの光を感じる明るくやわらかなタッチを、西陣織のさまざまな織技法をつかって鮮明に織り上げています。

ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841年~1919年)

フランスの印象派の画家。フランス・リモージュで生まれ育ったルノワールは、13歳で陶器の絵付け職人になり、その後印象派の発展によりリーダー的存在となりました。
モネが自然を描いていたのに対し、ルノワールは人物を描くことを得意とし、とくに女性の美を追求した作品が多いのが特徴です。

美術絵画織「接吻」

クリムトの最も有名な作品であり、ウィーン・アールヌーヴォの代表作。ベルヴェデーレ宮殿オーストリア絵画館(オーストリアギャラリー)蔵です。当時はタブーとされていた接吻という題材を描いたにもかかわらず、大評判となり政府買い上げとなりました。
これは19世紀末のウィーン万博で出品された尾形光琳の「紅白梅図屏風」に、強く影響をうけたといわれる作品。たしかにクリムトの「黄金の時代」と呼ばれた作品には、日本流の金箔技術と油絵とを融合させた独特の絵画技法がみられます。

金箔を多用したクリムトの絵画が、豪華絢爛な西陣織で表現される。まさに光琳とクリムト、そして西陣織の時を超えたコラボレーションといえる作品が誕生しました。

グスタフ・クリムト(1862年~1918年)

オーストリアのウィーン近郊に生まれ、19世紀末ウィーンを代表する画家。作品の多くは女性を題材にしているものが多く、エロティシズムな表現が特徴的です。金箔を大胆につかった豪華で装飾的な画面構成、平面的な空間表現、独自の絵画表現で人気を集めています。
また、彼は日本美術「琳派」からの影響を受け、作品のなかにはジャポニズム様式への強い関心を感じられる作品が数多くあります。

美術絵画織「リンゴとオレンジ」

今にも動き出しそうな、リンゴとオレンジ。テーブルの白布やお皿のうえで日常的に目にする静物が、なぜか躍動感さえ感じてしまう描写の妙。対象物を多角的な視点からとらえ、独自の技法で色や形を調整し組み合わせることにより、平面のキャンバスに多様な深みや生命力が表現されています。
キュビズムの幕開けを告げる重要な絵画の一つとされる作品。机の上に置かれた白布の自然なドレープなど細やかな表情を、西陣織のさまざまな織技法によって表現しています。

ポール・セザンヌ(1839年~1906年)

フランスの後期印象派の画家。モネやルノワールに代表される印象派とは一線を画し、独自の絵画様式を追求したセザンヌ。
とくに得意とした静物画では、多角的に対象物をとらえる手法を取り入れ、ピカソにはじまる20世紀のキュビズム実現に大きな影響をあたえ、しばしば「近代絵画の父」と評されています。

美術絵画織「舞台の上の二人の踊り子」

注目すべきは、ドガのするどい観察眼により描かれた、踊り子のうつくしく愛らしい表情。そして、左下に大きな空間をとった大胆な構図が踊り子たちの存在をより際立たせるとともに、左の少女のまなざしとポーズが右の少女へつながり、お互いが呼応していることです。

舞台袖斜め上からの構図は、ドガがオペラ座の会員であったため、バレエの練習やリハーサルを見学できたからこそのアングルでしょう。バレエ衣裳の立体感や踊り子の華麗な動きを、繊細な西陣織の技法によって表現しています。

エドガー・ドガ(1834年~1917年)

フランスの印象派の画家、彫刻家。幼いころから絵画に興味を持ち、デッサンの大切さを知り、終生デッサンを続けたといいます。
初期印象派で、古典主義を受けついだ綿密な画風が特徴的。作品にはバレエの踊り子を題材としたものが多く、練習風景や舞台で華麗におどる一瞬の動きを感性鋭くとらえた作品が特徴です。